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電通国際情報サービス、ガードタイム、シビラ、宮崎県綾町、ブロックチェーン技術を活用して地方創生を支援する研究プロジェクトを立ち上げ~第1弾として、宮崎県綾町の有機農産品の安全を消費者にアピールする仕組み作り~

2016年10月19日(水)

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株式会社電通国際情報サービスGuardtimeシビラ株式会社宮崎県 東諸県郡 綾町

株式会社電通国際情報サービス(本社:東京都港区、代表取締役社長:釜井 節生、以下ISID)のオープンイノベーションラボ(以下イノラボ)、Guardtime(本社:エストニア、CEO:マイク・ゴー、以下ガードタイム)および、シビラ株式会社(本社:大阪市西区、代表取締役:藤井 隆嗣、以下シビラ)は、本日付で、ブロックチェーン技術を活用して地方創生を支援する研究プロジェクト「IoVB(Internet of Value by Blockchain)」を立ち上げます。

また、第1弾の実証実験として、特定非営利活動法人「日本で最も美しい村」連合の加盟自治体の1つで、 日本における有機農法の取り組みをリードしてきた宮崎県東諸県郡綾町(以下綾町)と連携し、ブロックチェーン技術を活用した、有機農産品の安全をアピールする仕組みを構築します。

研究プロジェクトの目的

分散型台帳をネットワーク上に構築するブロックチェーン技術は、インターネットを行き交う情報の正当性を担保しうる新しい信頼のプロトコルとして、金融領域にとどまらず様々な分野での活用が期待されています。なかでも、大がかりなシステムへの投資や運用体制の構築が難しい地方自治体には、様々な課題解決において分散型であるブロックチェーン技術の適用可能性が広がっていると、イノラボ、ガードタイム、シビラの3者では認識しております。3者はこの認識のもと、ブロックチェーン技術を活用して、地方創生を支援する新たなプロジェクト「IoVB」をスタートします。

綾町との実証実験について

綾町の関わり

綾町は、1988年制定の「自然生態系農業の推進に関する条例」のもと、食の安全を求める消費者のため厳格な農産物生産管理を行っています。 綾町の有機農産品は、独自の農地基準と生産管理基準にしたがって「金」「銀」「銅」のランクが付与され販売されていますが、そこにいたるプロセスや価値が、消費者には十分に届いていないという課題に直面していました。綾町は、綾町独自の取り組みの厳格さや、出荷する有機農産品の品質の高さを消費者に向けてさらにアピールしていくため、今回の実証実験に参加します。

「金」マークをつけて販売される綾町産カボチャ

実施内容

本実験における検証ポイントは主に2点あります。

1点目は、生産管理情報をブロックチェーンで実装することによる効果です。綾町の各農家は、植え付け、収穫、肥料や農薬の使用、土壌や農産物の品質チェックなどを、綾町の認証のもと実施しており、今回の実証実験では、これらすべての履歴を、シビラの製品「Broof」を活用して構築するブロックチェーン上に記録します。

綾町はこのプロセスを経て出荷される農産品に、独自基準による認定マークとともに固有IDを付与します。

消費者はこの固有IDで検索することにより、その農産品が間違いなく綾町産であること、綾町の厳しい認定基準に基づいて生産されたものであること、それらの履歴が改ざんされていないことをインターネット上で確認することが可能となります。ブロックチェーンによるこの公証の仕組みが、消費者の行動に影響を与える可能性があるか、また、仕組みの運用が地方自治体にとって無理のないレベルであるかを検証します。

綾町が運営・管理するブロックチェーンの概要

2点目は、ブロックチェーンの信頼性担保です。今回の実験で生産管理情報を登録するブロックチェーンは、綾町が運営・管理するいわゆる「プライベート型」のブロックチェーンです。このブロックチェーンを、ガードタイムが提供するブロックチェーン「KSI (Keyless Signature Infrastructure)」と組み合わせることで、情報の信頼性をさらに高めた仕組みとします。

IoVBでは、このように2つのブロックチェーンで正当性を保証する仕組みを、PoP(Proof of Proof)と定義し、その実効性について検証します。

2つのブロックチェーンによる正当性保証(PoP)の仕組み

実施期間

2016年10月~2017年3月(予定)

各者の概要と役割

イノラボは、ISIDが2011年4月に設置した研究開発組織で、「街づくり」「観光」「スポーツ」などの領域を中心に様々な技術研究やサービス開発に取り組んでいます。これまでにも、大阪駅北口の大型複合施設「グランフロント大阪」における街と来街者とのコミュニケーション基盤の導入や、東京都品川区などとの協働による、訪日客と地域ボランティアガイドのリアルタイムマッチング実証実験などを手がけてきました。その経験・知見を生かし、当プロジェクト全体の企画・運営ならびにシステム構築を担当します。

ガードタイムは、エストニアに本拠を置くIT企業です。エストニアが世界に先駆けて導入した、ブロックチェーン技術を活用した行政サービス「e-Estonia」の中核プラットフォーム「X-Road」の開発・運用を行う先進企業であり、ブロックチェーン技術の社会実装において豊富な実績を有しています。当プロジェクトにおいてはその知見と、同社が開発したブロックチェーン「KSI (Keyless Signature Infrastructure)」を提供します。

シビラは、先進的なブロックチェーンの研究開発およびソリューションを提供する日本発のベンチャー企業です。FinTech以外の領域におけるブロックチェーンの仕組みを先行開発しており、当プロジェクトにおいては、ブロックチェーン構築に関する知見と、データベースとして使用できる独自開発の高速処理ブロックチェーン「Broof」を提供します。

3者はそれぞれの強みを持ち寄り、地方創生にむけた様々な領域において、ブロックチェーン技術を社会実装すべく、今後も多くの企業や自治体とともに調査・研究を進めてまいります。

※PoP(Proof of Proof)とは
異なるブロックチェーンを組み合わせて正統性を保証する仕組み。多くのブロックチェーンは PoW、PoS 等のアルゴリズムにより公衆監視の元で自律的に不正を抑制する機能を内包している。これはデータの正統性に数学的な裏付けを与える一方、不正防止のためには不特定多数の人が一定のリソースを使い続ける必要性をもたらしている。これら欠点は、不正抑制の機能をブロックチェーンが内包している事に由来する。PoP は不正抑制機能を個々ブロックチェーンではなく、疎結合なブロックチェーン同士のネットワークで提供する。個々のブロックチェーンの持つブロックは、作成時点の全データの指紋として働く。このブロックのハッシュを互いのブロックチェーンに登録することで、相互監視を行う。1 個のブロックチェーンがデータを改竄すると指紋であるブロックのデータが書き換わり、他のブロックチェーンと整合性が保てなくなる。これにより、特定管理者が運用する小規模なブロックチェーンにもデータの正統性を与えるだけでなく、異なるバージョン、異なる用途に特化した複数のブロックチェーンの運用を可能にする。

< 関連リンク >


http://www.isid.co.jp/news/release/2016/1019.html

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